STARS SHINE
カラオケが苦手だ。
仕事終わりに比較的いつも一緒にいる人、ほぼ初対面の人など男女数人で飲み会に行く。僕はお酒が好きなので飲み会が大好きだ。いつも一緒のメンバーは勿論、初対面の人達と色々話せて仲良くなれるからだ。しかし、良い時間になって二軒目に行こうかという流れになった時にその中でもお調子者の奴が言い出す。
「次カラオケ行っちゃう!?!?」
うるさい。酔っ払ってるから声の音量もバカ。
せっかく今まで楽しかったのにテンションを下げさせるな。
ここで拒否したり帰ると空気が悪くなるので渋々ついていく。
カラオケ店に行き、部屋に入ると誰も興味がないテレビが流れている。
もう既にその雰囲気が嫌。
なんなんだあの番組。大体数年前にテレビに出ていた微妙なタレントが微妙なMCをしていることが多い。大変だなタレントも。そう思いソファーに座り一旦ドリンクを頼んだりして時間を稼ぐ。
「お前何歌う!?」
歌いたくない。あとマイク越しに話しかけるな。
「とりあえず喉乾いたからドリンクきてからにするわ」
一生こなくていい。
コンコン
「お待たせしました〜ドリンクお持ちしました〜」
早いよ。仕事が早すぎるよ。
ドリンクで時間は稼げなかったが、みんなが歌い始めたのでひとまずは大丈夫だ。
カラオケが苦手な理由の一つに流行りの曲をよく知らないというのがある。みんなよくそんないっぱい曲知ってるな。ただ、流行ってるだけあってめちゃくちゃ良い曲だな。家に帰ったら原曲聴こう。
そんな風に思いながらもう既に飲み干した烏龍茶の溶けた氷を吸いながら身を潜める。
「あれ!?お前歌ってないじゃん!歌えよ!」
なに気づいてんだよ。
お前はそのまま三代目を歌っとけよ。
そもそも僕は音域が狭いし声も小さい。もう90dB以上の声が出ない人間はカラオケに入店できないようにしてくれ。だが、こう言われたらいよいよ歌わなければならない。
好きなアーティストも特にいないので毎回曲選びに悩む。全員が知っていて、尚且つ比較的高音がない曲。
小さな恋の歌/モンゴル800。
これだ。
少々サビに高音があるが超メジャーな曲だ。経験上一曲だけ歌ってしまえばその後曲を振られる確率は格段に下がる。
そうこうしてる間に僕の番になりイントロが流れる。
歌いだす。
全員がこっちを見る。こっちを見るな。
もう自分で何を歌ってるかわからない。
1コーラスが終わる。
長い。まだ後2回サビ歌うのかよ。
あなたにとって大事な人ほどすぐそばにいるんじゃないのかよ。
ようやく歌い終わった。
「イエ〜〜イ」
全く気持ちが入ってない声での賞賛。
でもこれでもう歌わなくて済む。
あとはもう眠いふりしてやり過ごそう。
誰かに肩を叩かれて起こされる。お調子者だ。
寝たふりをしてたら本当に寝ていたようだ。ようやく帰る時間か。
「もう終わりの時間だから最後にみんなで三代目歌おうぜ!!」
こういう奴が人生一度きり DREAM 掴めるんだろうな。
あーあR.Y.U.S.E.I.になりたい。